言われてデッサン用紙をひっくり返してみせると、彼はその場に静止した。 「……」 あれれ、固まっちゃったよ。 ああ、デッサンてなんて難しいんだろう。 「うじ君、わたしにデッサンの個人レッスンしてくれないかな?」 「なにい? 俺にも教えやがれ!」 わたしの言葉を追いかけて信号機がぴしっと右手を掲げる。 その乱暴な口調と潔い挙手の動作がかみ合っていない。