「最初は気付いてなかった。岩本さんにはじめて話しかけられた頃とかは。……けど、それ」 言いながら、わたしの胸元を指差す。 そこには金ぴかのオペラグラスが揺れている。 「それが、太陽に反射して光ったから」 目の端で何かがきらりと光って、振り返ったら、向こうの校舎に人の頭が見えた。 そう言ってうじ君が指差したのは、R棟の校舎だった。 6階の窓がひとつ開いて、カーテンが揺れているのが分かる。 さっきまでわたしがいた場所だ。