レンズ越しの彼は、やっぱりこちらを向いていて、目が合っているような気さえする。 うじ君のいるA棟からわたしがいるこのR棟を見ても、人がいるな、くらいにしか見えないはずだ。 視力2.0のわたしでさえ、 オペラグラスで覗き込んでようやくその人と特定できるくらいなのだから、 うじ君がわたしに気付いてるはずはない。 ドクドク響く心臓をそのままに、わたしはオペラグラスの中の彼をじっと見つめた。 すると、彼が急にスケッチブックを捲り始めた。 そして、おもむろにそれを両手で掲げる。