うじ君を見て泣くなんて、変だ。 感動的な映画を観たところで一粒も涙をこぼさない、 クール志摩と呼ばれるこのわたしが。 気持ちを落ち着けるようにふうと息を吐いて、窓の外に目を戻したときだった。 ベンチに座っている彼の顔が、こちらを向いているような気がする。 胸がざわついて、わたしは急いでオペラグラスをかざした。 まさか、ね。 そう思いながら焦点を合わせた瞬間、今度はハッキリと心臓が跳ねる。