この金ぴかのオペラグラスが、映し出しているのは―― 「……うじ君」 「……はあ? 何言ってんのアンタ」 呆れ声を漏らして、アキちゃんはデッサンを続ける。 うじ君が描き出す世界が好きなのに、 どういうわけか、うじ君本人ばかりを見つめてしまう。 視界の中にあるのは、真剣な眼差しでスケッチブックに向かう彼の横顔だ。 切れ長の目と、ほどよく隆起した鼻が景色に映える。