夕方、疲れた身体でまだ蒸し暑い残暑を感じながらマンションに帰る。
まだ夏服でいい気がするし!
袖をまくった手でドアを開ければ、キレイにまとめられたカバンが玄関の隅っこに置いてある。
「おかえり~桜彩」
「はっ……あ、ただいまー」
リビングに行くとソファーに座って、あたしの好きな海外ドラマを見てる。
夕陽に染まった横顔が、悔しいほどキレイ。
「社長から聞いてると思うけど、今日で出てくから。今までどうもっ」
「…ううん。アンタがいなくなって清々する!」
「ははっ!相変わらず冷たいね~……桜彩」
「ってゆうか、合鍵返してよ。ママからの伝言だから」
「ん、ありがとーございました!」
あたしの手に凛くんの指先が触れた。
それだけなのに、恥ずかしくなって頬が熱くなる……。
合鍵を握りしめて凛くんの背中をボーッと眺めても……
キスについては何もなし。
「よし!……桜彩の顔も見れたし、そろそろ行こっかな」
「も、もう行くの……?」
「あれ?清々するんじゃねぇの?」
「すっ、するよ!早く出てって!」
合鍵をバンッとテーブルに置いて、あたしは気持ちを隠す。

