台本が完成して配られたのは9月のもう半ば。
衣装係も急ピッチで用意を初めて、台本を配られたあたし達も急いで暗記。
あたし達主役チームは前後半別れて読み合わせ。
そう、笹本と二人で。
「まぁ、私を助けてくれたのね。ありがとう、王子様」
「こんなにキレイな姫を放っておけるはずがない。一緒に来て下さい……」
「嬉しい。喜んで」
「……はい!終わり!もう暗記しただろ?」
「まだしてない!笹本は頭良いからでしょー?ズルイ!」
「お前が物覚え悪りぃんだよ!」
確かにあたしは物覚え悪いですよ!?
でもこんな風に言うことないじゃん!
悔しくてため息をついて、再びあたしは台本とにらめっこ。
こんなに暗記苦手なんだけどあたし一応、女優の娘なんだよね……。
………そいえば、凛何してるかな?
ちゃんとご飯食べてるかな?
ううん、もう別れたんだから気にしちゃダメ。
「なぁ、椿」
「ん?」
「椿の彼氏ってさ……どんなヤツだったの?」
笹本から思いがけない質問。

