【桜彩side】



夏休みに入りもっともっと暑くなった8月。


去年のこの時期はちょうど、あたしが凛に片思いしかけてたんだっけ。


だけど今は─────



ずっと連絡をシカトしてたら、めっきり連絡が来なくなった。


だけどこのままじゃダメ。


ハッキリしなきゃ。


少し開けた部屋の窓から、蒸し暑い空気と冷たい風が入る。


緊張してるせいかその冷たい風が心地いい。


時間は夜9時半。


多分、凛はもう仕事終わってるはず……。


震える指先で、スマホに表示される『凛』って文字を押した。


電話が繋がる………。



心臓がドキドキうるさく音をたてると同時に、あたしの緊張も最大級。


出てくれる……かな?



『はーい。桜彩?』


その声はあたしが大好きだった人の声で。


紛れもなく凛の声だった。