キヨがカンナと話していると、仕事から帰ってきたイノリがリビングにやって来た。



「おかえり、イノリ」

「おう。キヨ、行くぞ!」

「は?今から!?もう夜だよ?どこ行くの」



キヨの質問に答える事なくイノリはキヨの手を引っ張り、車に乗せた。



2人の車が発進すると同時にバンド練習を終えたケンが帰ってきた。



「あれ?どこ行ったのキヨとイノリ」

「多分地元よ。やっとイノリ、決心したのね」

「え?決心って何?」

「さぁ、何でしょうね。…帰ってきたらわかるわよ」



カンナはケンに微笑むと、ケンと共に家の中に入っていった。





その頃、車に揺られているキヨとイノリ。

車内には優しいラブソングが流れている。




「高速まで乗ってどこ行くのよ?私、明日朝から仕事なんだけど」

「休め」

「そんな簡単に休めるわけないでしょ!?まだ新入社員なんだから。クビになったらどうするのよ」

「じゃあ辞めろ。クビになったってお前くらい俺が養ってやるよ」



イノリの言葉にキヨは顔を赤く染めた。

でも期待はしない。



イノリは優しい言葉を言った後、必ず期待を裏切るから…。



キヨはイノリの言動が少しトラウマになってしまっていた。