30代になっても、樹里は若々しくて変わらない。

そして、心配された太ももの傷は、キレイに治って跡も残らなかった。


「杏樹は何をしてるんだ?」

「柚莉ちゃんと出掛けたわよ」


ふ〜ん……杏樹はいないのか……。

書斎を出て、1階のリビングに行く。

今日は親父も出掛けていて、家にはいない。

今、家には樹里とふたりきりということか。


「樹里」

「なぁに?」


キッチンでケーキをカットする妻を後ろから抱きしめた。


「いつもありがとう」

「渉、急にどうしたの?」

「言いたかっただけ」

「ふ〜ん」


ちょっと考えるような表情になる樹里。


「……渉、大好き」

「なんだよ」

「言いたかっただけ」



俺達の初恋は、今も続いている。

そしてこれからも変わることはないだろう。




ニッコリと笑う樹里に、愛しさが溢れて……あの頃と変わらない口づけをした。





─終わり─