その日の昼休み。

男友達数人で弁当を開けた。

ガヤガヤとうるさい教室内。


「しかし、渉はカッコイイよな! 男でも惚れるよ!」

「そんなんじゃねーって」


柏木が、先ほどの数学のことで興奮したように言う。

鈴宮にギャフンと言わせたことが、なんかよかったらしい。

俺のクラスだけでなく、他のクラスにもこの話は広まっていた。


「さすが、学年1の天才生徒会長。T大入試を1分で解くとはなぁ~」


別に、自分の力を見せたかったわけじゃなくて、困ってる樹里を放って置けなかっただけ。

鈴宮にアイツを良いようにされるのは我慢できねーから。


盛り上がる友達らを放置して、弁当に箸を付ける。


食べ始めて、10分くらいした頃。

廊下が騒がしくなり始めた。


「おいっ……梨香ちゃんがいるぞ!」


気になったらしい柏木が、廊下に出て、帰ってきてから叫んだ。

梨香? 誰だよ、その子。

聞き慣れない名前に、首を傾げていた時。


「神崎会長いらっしゃいますか?」


女子特有の高い声に呼ばれた。

教室の入り口に目を向けると、女子の塊がいて、ひとりの子が俺を見てる。


「はい? 俺に何か用かな?」


弁当の上に箸を置いて、立ち上がり、彼女の元へ向かった。

近づくにつれて、顔を真っ赤に染める。

何だろう? 


彼女の目の前に立った瞬間、真っ赤な彼女は教室中に聞こえるように叫んだ。



「神崎会長……好きですッ……付き合って下さい!」