――――――――――― 「名前くらい聞いとけばよかったな…」 左手に巻かれたハンカチを眺める。 「30分経ったら外して良いって… 治ったりすんのか?」 女の子が駆けて行った廊下を見つめる。 「あんな子…初めて見た」 クスッと笑い、笑みが宿る。 「……必ず見つけ出して 手に入れる」 誰もいない廊下で呟く。 この やけどの手当をしたことで 一つの嵐が始まるとは 杏樹は知らなかった。