恋の花、ねぇ。

 咲いてくれた方が都合がいいんだが、正直、攻略方法がまったく見当がつかない。
 こんな事は初めてだった。

「も~♪ 胸キュンって言うのはね、胸が苦し~いような、締め付けられるような、そういう気持ちのことだよっ☆」

 考え込む絵理に対して嬉しそうに小雪が説明している。
 その言に絵理は大きく頷いて嘆賞した。

「なるほど! 胸キュンというのは胸部の疾患による症状を指す言葉か! うむ、一つ利巧になった。感謝する」

 大笑いする小雪。

 文庫本から顔を上げ、絵理を凝視する長船。

「うん。胸キュン状態になったら即病院に行ったほうがいいね」
 真面目な顔で、間違いを煽る青司。

 半笑いしか浮かんでこないオレ。

 ……誰かこの姫様をどうにかしてくれ……。