恭しく絵理の手を取り、車から降ろす。

「ご苦労。では陣、参るぞ」

 威風堂々、という四字熟語はこの女のためにあるんじゃないだろうか。
 そう思わせるような足取りで、絵理は式場へと向かう。

 その様子を学園の生徒たちが遠巻きに見ていた。

「ちょっと!誰よあの子!」
「タイが赤色だから、一年生じゃない?」
「何あの態度!陣様に失礼よ」
「顔もスタイルもたいした事ないじゃない。何であんな子が陣様と一緒に登校してるの?」

 女生徒達の会話が断片的に聞こえる。

 オレはこの学校では学園の王子と持て囃され、女生徒達の羨望を集めていた。

 他人より整った顔立ちと、入学以来ずっとトップの成績、おまけにスポーツも万能と来れば、持ち上げて騒ぐには格好の素材。

 多少煩わしいのを除けば、好意を向けられるのは何かと便利だった。

 その中で、ひときわ激しい視線を向けてくる女がいる。

 伊勢村千沙子(いせむらちさこ)。
 オレの前の主人にあたる女だった。