迷惑をかけてしまうことを恐れているのかと思い、ここは公爵家であり、自分は公爵令嬢であることを告げて安心させようとした。
 だが彼は、自分の問題を公爵の名で解決してしまうことを望まなかった。
 アルヴィンがここにいるのは、セシリアを助けるため。
 助けてほしいと、懇願されたからだ。
 そうきっぱりと告げられ、中身は二十九歳なのに、思わず惚れてしまいそうになった。
 なんと気高く凛々しい少年だろう。
 だから、こうして一緒に過ごしていても、彼の詳しい事情は知らないままだ。知っているのはアルヴィンという名前と、セシリアと同い年だという年齢だけ。
 でもその痩せた身体を見ると、たとえその理由が何であれ、アルヴィンを保護することができて本当によかったと思う。
 きっと成長したアルヴィンは、自らの手で問題を解決する。だからそれまで、傍で守ってあげようと決意した。
「大丈夫。ちょっと、これからのことに不安を感じただけ」
 そう言って笑みを向けると、アルヴィンはセシリアの足もとに跪き、真剣な表情で言う。
「心配はいらない。何があっても、俺が守護騎士として守る」
セシリアは、かろうじて崩れ落ちそうになる身体を支えた。
 ここで少年騎士の美貌と健気な言葉にノックダウンされるわけにはいかない。
「ありがとう、アルヴィン。あなたを信用しているわ」
 そう言って微笑む。
 色々と困難はあるかもしれないが、彼が傍にいてくれるなら、きっと大丈夫だと信じていた。