「うん。小学校の頃好きな子がいたんだけど、一緒にいると気分が悪くなったり、呼吸困難になって倒れたりしたの」


「それって、ただの偶然じゃなくて?」


あたしは左右に首を振り、そんなことが何度か起こったことを説明した。


「だけど、俺のときにはそのアレルギーだ出なかった?」


あたしはうなづく。


すると、船見くんの手がするりと離れて行った。


きっと嫌われたんだ。


こんな変な体質だし、アレルギーが出なかったから一緒にいたのだと思われてしまった。


目の奥がツンッと痛くなって視界が滲んだ。


涙が幕のように張って周囲が歪んで見える。


後ろに立っている船見くんは何も言わず、どんな顔をしているのかもわからない。


だけどきっと幻滅された。


研司があたしから遠ざかったのだって、納得できる。


あたしだって、こんな体質の人が恋人なんて嫌だから。


やがて、雨がぽつぽつと降り始め、それはあっという間に地面をぬらしていく。


「もう、帰らなきゃね」


あたしは振り向かずに声をかけ、お気に入りの傘を差すこともなく、公園を出たのだった。