『旦那様、エマお嬢様のことなのですが…』


『あいつは公立高校でいい。そのときは苗字も変えさせる』


『…承知いたしました』



柊(ひいらぎ)財閥───、

それが2人の姉妹が誕生した、日本の中でも有数財閥のひとつ。


成績優秀な姉、問題児の妹。

とうとう父親からも切り離される目線が送られるようになってしまって。



『えっ!?公立でいいの!?やったぁ!放課後とかカフェ行ったりカラオケ行ったりできるーーー!!』



だとしても。

少女はそういうものを気にするキャラクターではありませんでした。


少し抜けていて、ひょうきんで無邪気。

そんな性格に自分自身が助けられているくらいだったのです。



『エマお嬢様…、くれぐれも旦那様とアリサお嬢様にご迷惑だけは…』


『わかってるって!オールオッケーだよ!───あ!』



広い洋館のお城のような家。

どこからか迷いこんだ野良猫を見つけると、少女は迷いなく駆け出して。


迷わず厭わず抱き上げて、困っている動物がいたら助ける精神だけは人一倍。