私は外に出ると、目を合わせずに笑った。


『そんなに心配しなくても平気だよ、昔じゃないんだから。ふふ。』


『・・・・・・・・あのなぁ。』



すると亮太は、がしっと私の頭をわしずかみにした。


そのまま髪の毛をわしゃわしゃと乱す。



『?!ちょっと!』


『お前な、確かに最近急に大人びたよ。でも殻にこもっただけだ、いきなり強くなった気になってんじゃねえアホ。』


全て見透かされていて言葉がでない。

私が彼の手をどかし、ぐしゃぐしゃの頭のまま見つめ返すと、

なぜか彼が苦しそうに笑った。



『いろんな事に、冷めちゃうのは、しょうがないけどさ。俺にまで人間らしいとこ隠すなよ。
寂しいじゃんかよ。』



彼の言葉に思わずこみあげるものを、両手で覆う。



亮太のくせにあーもう、うるさい、うるさい・・そんな事を言っていると、ふわっとした風と共に、急に体が温かくなる。


亮太が私を抱きしめている。




驚いて離そうとしても、なかなか力が入らない。


亮太は私を壊さないように優しく、
しかし何かから守るように強く、包み込んだ。


肩に押し付けられた鼻が苦しく、
いつのまにこんなに背が伸びたのだと驚いた。


体もごつごつと骨っぽい。

亮太は知らぬ間に男になっていた。
絆創膏以外に、傷を癒す方法を知っていた。




私は観念して力を抜いた。



バスケ帰りの亮太の髪は少し汗臭くて、
それでも心地いいと思えてしまう事に気づくと、
改めて自分の弱さを実感した。