ケータイ小説 野いちご

そこから先の出来事はよく覚えていなかった。


中年男性とホテルに入って、その後どうなったのか……。


沢山泣き叫んで抵抗したかもしれないし、なにかをする気力もなくされるがままだったかもしれない。


けれどその1時間後、あたしは一万円札を三枚握り締めてホテルの前に突っ立っていたのだ。


いつ、どうやってホテルの部屋から出てきたのかも覚えていなかった。


呆然と立ち尽くしていたとき、盗撮男が近付いてきた。


あたしは小さく身震いをして後ずさりをした。


「金」


男は右手を差し出して、一言いった。


それは抑揚のない、ひどく冷たい声だった。


「なんでこんなことするの……」


あたしは震える声で男に聞く。


男はその質問に答えることなく、あたしからお金を奪ってその場を立ち去ったのだった……。

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