けれど思い返せば、理人先輩は度々、意味深なことを言っていた。

私のことも若さんのことも知っていて。

それは自分が婚約者だったから……?


「嘘……でしょ……」


不本意な形で知らされた婚約者の正体に、頭の中が混乱する。

婚約の話が勧められていることは若さんの情報から得ていたこと。

だけど、まさか同じ学校に婚約者がいるなんて聞いてない。

まさに寝耳に水……。


「だからいいよ。今だけそうやって、彼氏気取りしてな?」


教室から出ていこうとした理人先輩は、蓮くんへともう一度振り返った。


「どうせいくら足掻いても、歌鈴ちゃんはキミのものにはならないんだから」