ケータイ小説 野いちご

不機嫌なキスしか知らない




他の女の子のグロスの味がするキスなんて、最低だ。


初めての、キスだったのに。
直前まで麗奈先輩とあんなことしてたのに。


それなのに私、どうして逃げなかったんだろう。


……どうして、嫌じゃなかったんだろう。




それはきっと、藍沢くんの泣き顔を見てしまったから。

私と同じくらいばかなことを、知ってしまったから。


藍沢くんのこと慰めたいって、慰めて欲しいって、思ってしまったからだ。





『紗和』って呼ぶ声は、思ったより低かった。


藍沢くんとちゃんと喋ったのは初めてだったのに、どうしてこんなことになってしまったんだろう。



唇から彼の感触が消えてくれない。
頭の中から彼の泣き顔が出て行ってくれない。


……藍沢くんのこと、なにも知らないのに。



それなのにどうしてこんなことしてしまったんだろう。



私が知ってるのは彼の泣き顔。
そして、不機嫌なきみのキスだけだ。








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