歩くたびに綾の茶色い髪の毛が揺れて、シャンプーの香りがする。


備え付けのシャンプーは使わなかったのか、それは俺とは違う香りだった。


ギュッと握られた手からは綾の温もりを感じて、自分の鼓動が少しずつ早くなるのを感じていた。


いつからだろう。


綾の事を幼馴染以上だと思い始めたのは。


気が付けば俺の目は綾を追いかけていた。


だけど、俺はこの気持ちを綾に伝える気はなかった。


お互いに大きな企業の子供だと理解している。


綾は綾で、俺は俺はで定められた相手がいるのだ。


「え、これだけしかいないの?」


綾の言葉に我に返ると、いつの間にか広間に到着していた。


しかし、そこにいたのは数人の生徒たちだけだった。


さっき廊下で見た生徒を合わせても10人くらいしかいない。


「先生たちは?」


俺は集まって来た生徒たちへ向けてそう聞いた。