「ダメっ、遅刻しちゃうよー!」



本当はこのまま寝たふりを続けていたいけど、これ以上真由を困らせるのはかわいそうだから、おとなしく起きてあげることにする。

覚めない眠気があくびを誘って、大きく口を開ける。

そんな俺を見て、真由が口元を緩めていた。

あー、カッコ悪いとこ見られた……。



「……真由、なに笑ってんの?」

「ふふっ、なんでもないよ。それより早く支度しなきゃ。遅刻しちゃう……!」



……まあ、可愛い笑顔が見られたからいいか。

朝の支度をすませて、2人で家を出る。

真由の歩幅に合わせてゆっくり歩いて、学校までは徒歩15分くらい。

その間が、俺にとっては至福の時間。

真由は、昨日見たドラマの話や家族の話を一生懸命俺に話してくる。

たまに熱が入って、手を握ってきたりするけど、その度に俺の心臓が飛び上がっていることなんて、真由は知らないだろう。

素直で無邪気で優しくて、可愛さが溢れ出ている俺の幼なじみ。

最近、そろそろ幼なじみを卒業してもいいんじゃないかと思う自分がいる。
ていうか、多分もう俺が限界なんだろう。

真由の優しい“幼なじみ”でいることに。

学校が近づくにつれ、歩く人の数も多くなる。