「特別賞のデートです」


そう言われて、あれが記事になるのだと思い出した。

美穂がクリアファイルに入った原稿をデスクに置く。見開き二ページにわたり、優莉とのデートの様子が書かれている。
記念撮影のような写真のほかに何気ない様子を撮影した写真もあり、なかなかの出来栄えだ。最後にはふたり揃って宇賀から逃げ出したというのに、そんなラストを思わせない締めくくり方だった。

優莉の緊張は写真にも不自然さとして表れていて、宇賀の指示で抱き寄せた隼から無理に体を離そうとしているのがよくわかる。


「社長、楽しまれたんじゃないですか?」
「どうして?」
「とてもいい笑顔です」


美穂がそう言って笑う。
事実、隼は楽しんでいたため、そこを指摘されて若干うろたえる。美穂はなかなか鋭い。


「前回は男同士だったからね」
「そうでしたね。今回は女性でよかったです。原稿の方になにかありましたら、私におっしゃってください。宇賀さんにお話ししますので。では」