「ちゃんと暇もらってきた。そしたら架までついてきてなー」

「主家の大事だ。出奔(しゅっぽん)した兄貴にばかり任せるわけにはいかない」

真面目な顔で言うのは、桜城くんだった。

桜城くんには、転校することは伝えてある。

飲み下しきれない顔をされたけど、それだけだった。

「黎くん、架くん、ありがとうね」

今、一緒にいるのはママだけだ。

紅緒様は、これから住む家の方で準備をしているそう。

家具なんかは持って行く必要ななさそうなので、本当に身の回りのもの、着替えやら学校のものだけだいいようだ。

「いいえ。こちらが勝手にやりたいだけです。お邪魔でなければいいのですが」

「そんなことないわ。ほんと……真紅ちゃんのために、ありがとうね」

ママは、穏やかに話しかける。

私はママの思いがありがたい一方、この双児の妹はあれだからなあ……という複雑な心境だ。