ケータイ小説 野いちご

闇の果ては光となりて

「神楽ちゃ〜ん、もう起きてるぅ?」
廊下から聞こえた声に我に返る。
ぼんやりとしてる場合じゃなさそうだね。
「起きてるよ」
手櫛で髪を整え、ベッドから降りドアへと近付いた。
「あのね、総長と霧生が呼んでるぅ」
光は朝からテンションが高いね、と思いながらドアを引き開けた。

「・・・おはよう」
満面の笑みを浮かべた光に朝の挨拶をする。
「おはよ、神楽ちゃん。着替えは無いけど、顔を洗うのは幹部室で出来るからね、行こ!」
「あ、うん」
本当、テンション高い。
朝っぱらからこれはキツいな。
苦笑いを浮かべながらも、これはこれでなんだか新鮮な気がした。
だって、自宅ではいつだって一人だったから。

光に手を引かれるまま、廊下を歩き一階を目指す。
階段を降りる寸前に思い出したのは、ここが暴走族のたまり場だって事。
今が何時だか分からないけど、朝の時間帯だろうにうようよ居たんだよ、不良と呼ばれるカラフルな人達が。
階段の手摺を握るとギシッと音がして、一斉に視線がこちらに集まった。
怖いんですけどぉ。
向けられた様々な視線に思わず足が止まる。
「神楽ちゃん、心配いらないよ。奴らは神楽ちゃんに危害を加えたりしないよ。霧生が朝から、自分の子猫が仲間になったって脅し半分に説明してたからね」
「あ、うん、そうなんだ」
紹介が子猫って言うのと、脅し半分って所に引っかかりを覚えたけど、あえてスルーした。
「うん、そうだよ。おーい! 皆。彼女が霧生が言ってた子だよ。可愛いでしょう? 可愛いよねぇ、神楽ちゃんて言うんだよ。僕もかな〜り気に入ってるから悪さしちゃ駄目だよぉ。やるなら死ぬ気で来いよ」
ゆったりと話していた光が急に纏う空気を変え、低い声で恫喝した事に驚き、彼の横顔を見上げた。
愛らしい顔はそのままに目だけが鋭く尖ってた。
・・・うん、切り込み隊長なんだね、そんな片鱗を見た気がするよ。

「ん? どうかしたの? あ、神楽ちゃんも挨拶しとこうか」
優しい微笑みで私を見た光がとんでもない提案をしてきた。
ひ、ひぇぇ・・・ここで挨拶なの?
「あ、う、うん」
嫌とは言えない日本人です。
見られてる、すっごく見られてる。
一階の人達からも、隣の光からも。
ええぃ、ままよ! なるようにしかなんないよね。
「望月神楽です。今日からよろしくお願いします」
声を振り絞りそう言って深く頭を下げた。
シーンと静まり返るホール。
短過ぎた? 挨拶、短過ぎたの。
どうするの、この空気。
誰か助けてぇ〜!

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