「厄介な方なんですか?」

「厄介なクソジジイなんだよ。
 親戚の――」

「支社長、厄介なクソジジイが到着しました」
という杵崎の声がして、勝手に支社長室の扉が開く。

 杵崎と一緒に、厄介そうなジジイが立っていた。

 失礼、川久保常務が立っていた。

 見るからにめんどくさそうな年配の男だ。

 陽太と杵崎の親戚のようだが、二人には、まるで似ておらず、少し小柄で恰幅のいい男だった。

「陽太、元気か」

「……支社長と言え」

「じゃあ、お前も敬語使え、クソガキが」

 クソガキ、と苦笑いした深月を川久保はチラと見、

「この娘か。
 お前が秘書室に連れ込んだ愛人というのは。

 まだ年端もいかない子どもみたいな顔してるじゃないか。

 可哀想に、お前、極道か」
と陽太を罵るが。

 ……いやなんか、私も一緒に罵られてるみたいなんですけど、と深月は苦笑いして立っていた。