「一人で生きていくためには必要なことよ。それに貴重な魔力を簡単には使いたくない」

俺たちの体内には魔力を宿した(ロゼ)と呼ばれる物が存在している。

魔法を使うにあたって必要不可欠なもので、大気中に漂うマナを魔力に変換させることで魔法を使うことが出来る。
 
だが逆にマナは俺たちにとっては有害な部質だ。

雫を体内に宿していなければ、マナの毒によって体は蝕まれる。

雫を宿さないで生まれて来る子が居るなんて聞いた事がないが、そう言い伝えられているってことは、昔に雫を宿さないで生まれた子が居たのだろう。

「それなのにあなたは少し魔力を無駄使いしているように見えるけど」

「そ、そんなことないぞ! ちゃんと考えて使っているさ」

オフィーリアは疑わしい瞳で俺を見てくる。

それがミリィと似ていてとても悲しい。

「普通にしていれば可愛いのにな……」

「何か言った?」

「いえ、別に」
 
こんなこと言ったら速攻で叩きのめされるのがオチだろう。

あの時のスピードといい、剣術といい、あれは並大抵の努力じゃ身につくことのないものだ。

あれは誰から襲わったのだろう?

「そういえばオフィーリアって何処から来たんだ?」
 
話を逸らすためになんとなくそんな質問をしてみた。
 
俺の質問にオフィーリアは持っていたフォークを置くと窓の外を見つめた。

「ここからずっと遠い東の果てにある村だよ」

「東の果って言うと……どの辺りだ?」

「どうしてあなたに詳しく話さないといけなのよ?」

「はい、ごもっともです」
 
やっぱり自分に関することは話してくれないか。

それだけまだ信用されていないって事なのだろう。

未だに名前すら呼んでくれないし。