「お姫様が誰の護衛もなしとか運がいい。連れていくぞ」



私が逃げようとしたところで……ムキムキ男が私の背中にナイフを突きつける。



「抵抗したら殺す」



ドスの効いた声で言われ、一瞬で体が動かなくなった。



私が抵抗しなくなったのを見て、コンビニに止まっている黒いワゴン車に乗せられた。



昼過ぎのこの時間、コンビニに来る人は少ない。それに私がなんの抵抗もしなければ通報なんて絶対にされないだろう…


…最悪だ



「それにしても可愛いじゃん♪」



隣に座った金髪男が私の顎をつかんで無理矢理視線を合わせる。



「夜瀬もいい趣味してやがるわ♪どう?雷龍の姫やめて俺らの姫にならない?」



金髪男はにやにやしながら私に聞く。



……そもそも…



「…姫って…なんですか…?」


いろんな人が"姫"って言ってたけど……結局なんなのかわからないままだ。


金髪男は私を見て大笑い。



……聞いただけなのに…



「…何とぼけたこと言ってんの?」



さっきまで大笑いしていたのに…笑うのをやめたと思ったら私を睨みつけた。



「夜瀬詩優の女なんだろ?」



……夜瀬詩優…?



きょとんと目を丸くする私。



一瞬だけ時が止まったかのような……