お父さんが最後のパンを口にほおり込んでそう聞いて来た。


「反対される覚悟で言うけど、あたしバイトがしたいの」


そう言うと、慌ただしく動いていてお母さんがピタリと止まった。


「バイトって、なんでまた」


お父さんは困惑したように目をキョロキョロさせている。


昨日の喧嘩を聞かれたと思っているのかもしれない。


そんなお父さんを安心させるように、あたしはほほ笑んだ。


「あたしも高校生だしさ、お小遣いとかスマホ代とか、自分でどうにかしたいし」


明るい口調でそう言ったのに、お父さんとお母さんは目を伏せてしまった。


喉が渇くのを感じる。


けれど、ここで引き下がるワケにはいかなかった。


自分のためだけじゃない。


家族3人がここで暮らして行くために必要なことなんだ。