耀を好きになってわかった。今回の恋心は、これまでのものとは重さが違うと。

もどかしい気持ちを吐き出すと、幾分かスッキリした。そんな私に、倉橋さんは眼鏡の奥の瞳を優しく細めて言う。


「加々美さんは違うんですね」


そう、耀は違う。最初から私の中身を見て、受け入れてくれている。彼ほど器の大きな人が、この先他に現れるとは思えない。

思いを巡らせていた私は、再び倉橋さんがこちらを見つめていることに気づき、はっとした。


「恋する綾瀬さん、すごく可愛いですよ」


にっこりと無邪気に微笑まれ、羞恥心が込み上げる。

そういうこと言われるの慣れてないんだってば……というか、なんで倉橋さんに語ってしまっているんだろう。

若干の苛立ちにも似た感情も湧いてきて、私は完全なる愛想笑いを作り、トゲを忍ばせた言葉を突き刺す。


「私のことばかり気にかけていないで、もっとご自分の色気を出す研究でもなさったらいかがですか?」

「あっ、ヒドい……」


ショックを露わにする彼女に構わず、私はさっさと先を急ぐ。それでもへこたれずについてくる彼女を、やっぱり憎めないなと思いながら。