ケータイ小説 野いちご

パクチーの王様




 月末、芽以は会社に行った。

 いよいよ、最後の朝だ。

 見慣れた受付からの景色。

 朝日に輝くガラス張りの玄関。

 初めて此処に緊張しながら立ったときのことを思い出す。

 すべてが懐かしく、涙が出そうだった。

 同期のみんなや職場のみんなが途中で来てくれて、それぞれ大きな花束をくれた。

 課長が笑って言ってきた。

「今度、パクチー食べに行くよ」

「ありがとうございます」

 同期が笑って言ってきた。

「パクチーは食べないけど、行くね」

「……ありがとう」

 その気持ち、ちょっとわかる、と思いながら、芽以は笑った。





< 539/ 555 >