「結婚できないとわかっていても、周りがそういう目で見てくれてるだけで、結構幸せだったかもな。

 芽以との幸せが自分が望めば訪れる気がして」

 でも、俺はきっとわかってたんだ、と圭太は言う。

「芽以が俺を愛してはいないこと。
 きっと、なんとなく悟ってた。

 だから、迷いながらも、日向子の話を受けたんだ」

 芽以の心が自分にあったら、こんな未来を選んではいない――。

 圭太はそう言った。

「ま、ひとつ教えてやると。
 芽以は結構駄目な奴に弱いぞ。

 支えてやらなきゃとか思うみたいで。
 俺のような駄目人間とか」
と笑う圭太に、逸人は大真面目に頷き、

「そうか。
 お前のような駄目人間になればいいんだな」
と口の中で復唱する。

「いや、そこは否定しろよっ」
とただ自虐的に言ってみただけだったらしい圭太が文句を言ってきた。