真紅から離されようとした手を、摑み返す。震えていた。細く震えている。
 

申し訳ない? 顔向けできない? ……真紅に近づいたら、そんな風に思われるのか?


「……俺が真紅に浮気みたいな真似したから、申し訳ないって?」


「………」
 

真紅は首を横に振った。雫が飛んだ。泣いて……いるのか?


「黎に……彼女いる……いたら………私、……」


「うん。言ってみ?」


「彼女さんに、申し訳ない……」


「どうして?」


「こんな、優しくされたら………だめってわかっても………れいの、こと、………すきになっちゃうじゃん……」


「―――」


「だから、そういう人がいるんだったらもう私のこと……


「それって」

 
両手で真紅の頬を包む。上向いた真紅と視線が重なる。


「なりかけてくれているってこと?」