「どうする? 今日から泊まっていくか」

 ふいに逸人がそんなことを言ってきた。

 このミルク、美味しいですね。

 取り寄せてるんだ、瓶入りのヤツを牧場から。

 へー、そうなんですかー、の次のセリフがそれだった。

 相変わらず、唐突な人だ。

 しかし、これは、どういう意味で言ってるんだろうな……?

 逸人が冷蔵庫から出してくれた瓶入り牛乳に描かれた、のどかな表情の牛を眺めたまま、芽以は固まる。

 妻として?

 じゃないよね、まだ結婚してないし。

 住み込み店員として?

 いや、まだ働いてもないですし。

 帰るおうち、あります、と思ったまま、芽以が返事をしないでいると、逸人は、

「ところで、お前、なんで、圭太と結婚しなかったんだ」
と訊いてきた。