革命が起こった当時、先帝の子を身篭った妃は数名居たが、現皇帝陛下は殺すことなく、


『生まれてくる命に罪はない』として、無事に出産させたらしい。


先帝が皇太子と共に廃された時、先帝の皇后もまた、殉死した。


皇帝陛下が革命のために倒れなかったら、次代の皇帝の母、つまり、後の皇太后以外の妃達は道観へ入り、これからの生涯は亡き皇帝陛下のための供養に捧げる―……それが、本来の後宮の在り方であるが、何せ、先帝陛下の死は革命によるものであったから、そうはならなかった。


望むものは道観に入れられ、望まぬものは息子の治める土地に赴いた。


皇女しかない妃は俗世を捨て、己の生涯を自由に生きる。


子の持たぬ妃は現皇帝陛下の恩情で別の御方に嫁いだもの、本来の夢を叶えたもの、と、多くのものが存在し、今もこの国の行く末を見守っていることだろう。


現在、後宮には新しい皇帝陛下のために用意された妃が暮らしていると言う。


中には先代、先々代の妃もおり、現妃たちの教育係を務めているようだ。


しかし、誰も、現皇帝陛下の寵愛を受けたものはなく、現皇帝陛下の容姿ですら、定かではない。


噂では、地方で戦をしまくっていた、とある男に特徴が似ていると言う説もある。


謎の多い皇帝陛下だが、腐敗の頃よりは、革命の時よりは、この街で人が笑っている。


それは何よりも、翠蓮にとっては嬉しいことだった。