勝手に引きずり出した布団に横たえた真紅の頬を撫でる。
 

母が吸血鬼なら、父は鬼人の家の当主だ。


例のない混血だった俺は、今、陰陽師の家系に籍を置いて、監視下にある。
 

――ということになっている。
 

監視という名目に匿われて、俺は今、人間として生きることが出来ている。
 

そんな厄介なだけの自分が。


……よりによって人間の血を欲するようになるなんて。
 

最期まで傍に、なんて約束を、するりとかわしてしまうなんて。


「真紅……」
 

最期のとき傍にいる。
 

その言葉は、嘘じゃない。


「ん……」


「真紅?」


「んー……? ママ……? 今日は遅かったね……」


「真紅―? おーい、ママじゃねーぞー」


「……え。ええっ⁉」
 

がばっと飛び起きた真紅はうす掛け一枚握って窓際まで逃げた。


「なっ! 何あんた! どやってここに入ったの! 警察呼ぶよ!」


「やっぱ混乱するよな……」