「生きている者と存在している物しか呪えないと…」

レインが簡単に訳すと燐は頷いた。

呪いは生きている動物や植物、そこに存在している物しか発動しない。

それは、人間はもちろん
家具や建物
発動中又は発動した魔法や魔法陣

に対しては呪いを使うことができる。

逆に言うと、
不老不死となった動物や植物
すでに壊れた、消滅した家具や建物
発動していない、使っていない魔法

に対しては呪いが使えない。
使ったところで効果が全くないのだ。

「つまり、ハーメルンたちはその呪いに対して対策を練った…ということですか」

レインは厳しい顔をしながら、燐に問う。
それに対して燐は おそらく と頷いた。

「…戦況…やばい……?」
「かも…」

水無月と神無月はお互い顔を合わせながら数少ない言葉で会話をする。

実際、水無月が言っていることは当たっていた。

「仕方ない。何人死のうと止めないと行けないことだからね…」

扇はため息を着きながら、解散を命じた。

陰と陽はグリムズに一旦帰り戦力集めを再開。

楓、薬、紅は、情報を整理するためにグリムズが所有している建物に行った。

「大変なことになってきたな」

燐たちも部屋に戻り、明日の試合の準備をして一息を着いたところだった。

「うん。向こうにはハーメルンの幹部やメンバーたちが世界中から集まる。

それに加えて強化された魔獣もいるしね。」

燐はため息を着きながらソファにもたれかかった。

「ところで、明日は何の競技があるっけ?」

堺人も燐の隣に座る。
燐は液晶画面を映し、プログラムを表示した。

「剣術二刀流、銃、ポールウェポン杖使用魔法、か。」

堺人は明日の予定表を見ながら呟いた。

剣術二刀流は燐
銃はカイン
ポールウェポンは燐と蜘夜
杖使用魔法はアーミャと神無月

が出場する。

しかも、燐は昨日の堺人と同じく2部門あるため普通は体力が持つか不安なところだ。

しかし、燐は魔力が学院で一番多く戦い慣れているためそんなに体力が落ちることはまずないだろう。

「燐は何ブロック?」
「えーと…確か、両方ともAブロック…!」

燐はそこであることに気がついた。

「まって!試合重なって…」

燐はソファにもたれかかった体を勢いよく堺人の方に体重を寄せる。

プログラムを見て燐は フゥ と一息ついた。

剣術二刀流はAブロックの3番目
ポールウェポンはAブロックの27番目

丁度最初あたりと最後あたりなため、試合が重なることはまずないだろう。

「それでも、連続続きになるからその間の補給を大切にしないとな。」

燐の付き人として燐のそばにいることになる堺人はその辺を整理していく。

試合は決着が着くまでなため、予定する試合時間が前後する。

昨年上位者だと、数秒で終わるなんてことも稀にある。

逆に両者共に同じ強さならば試合時間は5分や10分と大幅に変わってくる。

「燐の最初の相手は…
千上学園の宮塚 マリン(みやづか)っていう人だね。」

「うん。
この人は昨年のブロック3位の人だね。

後一歩のところでブロック優勝出来たのだけど試合中の怪我でリタイア」

燐は昨年の大会の情報が載ったものを液晶画面に写して読み上げる。

個人はブロックで優勝しなければその先に進めない。

各ブロック優勝者5人が1つのリングで殲滅するまで戦う という特殊なやり方だ。

同じ学校の者がいれば結託し、自分たち以外を戦闘不能にし優勝か準優勝を狙う

なんてことも可能であるため毎年優勝者の学校はバラバラだ。

だが、ほとんどの部門で優勝を繰り返している才華龍学院は強者と言えるだろう。

そのため、まずはグロックで優勝しなければ燐は朱里と戦うことが出来ないのだ。