「おっと」
転移した先は弓術が行われている会場入口。
突然燐たちが現れたことに他の人達は驚いていたが転移魔法の魔法陣を見て納得したようで、珍しそうにこちらを見ることは無かった。
「燐…お前突然腕を掴んだと思ったら転移しやがって…うぷ」
葉杉はいきなり転移をする時に圧力に負け、今は吐き気で立っているのがやっとであった。
「ごめんなさい。でも先生がいないと出場できないし…」
燐は言い訳しながら堺人の後に隠れた。
堺人は 忘れかけてたがな と苦笑いであった。
「…ふぅ、仕方ない…ほら行くぞ」
葉杉は酔い止めの魔法を使い、復活する。
酔い止めの魔法は乗り物酔いや吐き気に効果がある魔法であり、酔いやすい人の為に作られた簡単な魔法だ。
燐と堺人は はい と葉杉の後について会場に入っていった。
「頑張ってね」
燐は堺人にそういった。
感情があまりこもっていないような感じはするが燐がこの言葉をする方が珍しいので堺人にとっては嬉しい。
「うん、勝ってくるよ」
燐の頭を撫でてフィールドに続く道を歩いていった。
(こいつらパートナーにしては恋人同士に見えるな…)
葉杉は燐と堺人を小等部から知っているためこんな2人を見るのは初めてであった。
〜・〜・〜・〜
そして、堺人は剣術一刀流、弓術共に4回戦まで勝ち残った。
個人は予選4回、準決勝、決勝となっているため堺人はベスト4まで来た。
それはレインも同じで才華龍学院の生徒は今のところ勝ち進んでいる。
「堺人ー!準決勝でしょ!おめでとう!」
「ありがとう。アーミャもだろ?おめでとう!」
堺人がそう言うと、アーミャはヴイとピースをする。
「明日は何があるっけ?」
アーミャは明日行われる競技を問う。
紅葉は柳が持っていたプログラム表を取って明日の予定と明日行なう競技の選手一覧が書かれているページを開きみんなに見せた。
「明日は剣術二刀流、銃、銃剣、体術、中距離魔法ですね。
ということは…」
「燐、カイン、紅葉か」
柳は紅葉の言葉に続いて口を開いた。
燐たち以外で、剣術二刀流に朱里、中距離魔法に玄真がいる。
「朱里と玄真とはブロックが違うから当たるのは各部門決勝か」
朱里と戦うためには各ブロックの決勝まで進みそこで勝たなければならない。
「おっ!いたいた」
そこに、扇と獄が現れた。
「ちょっといいかな?紹介したい子がいるから」
扇はそれだけ言って歩き出した。
それに獄、燐と続いて追いかけた。
「ここなら大丈夫よね」
着いたのは1つのお店であった。
落ち着いた雰囲気のカフェで夕方に差し掛かった時間帯だが客は1人もいなかった。
「いらっしゃい!」
「…いらっしゃい」
そこで堺人たちは驚いた。
厨房から出てきたのは陰と陽であった。
陰と陽の服はこの店の制服なのだろう。
ばっちり着こなしており、いかにもスタッフ感がある。
「えっと…」
イマイチ理解できていない堺人は困惑していた。
なぜ、グリムズの暗殺者がこんなところにいるのかが。
「ああ、僕たちは情報収集が第1の仕事だからね。
たまに、こうやってお店のスタッフをして情報を集めてるんだ。」
そんな堺人に気がついた陽は説明してくれた。
それに陰も頷く。
客が1人もいないのは陰が得意とする人避けの魔法を使っているからだ。
そのため、お店貸切より人がこの辺りを歩き回ることはなくなるわけでコソコソするには丁度よい。
「…全員ですか?」
陰が短くそう聞いた。
ここにいるのは扇、獄、燐たち、陰と陽だけであった。
扇は そうだよ と頷くと陰はお店の奥へと進んでいった。
「陰について行って!」
戸惑っていた堺人、カイン、紅葉、柳であったが陽の声でそれにしたがい奥に入っていった。
「ねぇ、陽」
堺人たちが見えなくなったところで燐は陽に聞いた。
「なんだい?…もしかして殺は気づいちゃった? 」
陽の問いに燐は頷いた。
そして、それ以外の"魔力"にも。
「そうだよ。今日来てるんだ先生たちが…
それと久しぶりに会うんじゃないかな僕達以外の人は」
陽はクスッと笑う。
それに燐も そうだね と笑うのだった。
だが、どこが寂しげな…