「でもね、一年くらい前かしら。なんだか嬉しそうにしていたのよ。警察が来たあとだったかしら」

「警察の方がですか」

「しばらくは少し明るくなったのにねえ。それから段々と暗くなって、目つきもなんだか怖くて。今では誰も声を掛けないし、挨拶もないわ」

 だから買うのは無理よ~と笑ってオレンジジュースのグラスを掴む。

「一時期は幸せのストラップとかで繁盛していたらしいわよ。でも、ああなっちゃもうだめよね」
 思い出したようにストローから口を離し付け加えた。

「そうですか」

 ラクベスは聞きたいことが聞けたのか、コーヒーを飲み干して立ち上がる。

「ありがとうございます」

「あら、いいの?」

「このご縁の記念に」

 自分と女性の伝票を持ちレジに向かった。

 店を出たラクベスは、スマートフォンをいじるとパーシヴァルに連絡を取る。

「ラクベスです。新しい情報が幾つか。警察署に──ええ」