「いやあ、噂ってすげえな」
大きく頷きながら、なぜか感心したように笑う三成くん。
「やっぱり全部ただの噂だよね?」
「いやその逆。だいたい合ってるぞ」
「なっ…、え?」
まさかの答え。
手のひらに汗がじんわりと滲んだ。
暴走族の総長、幹部、だった。
……もしくは現役?
家がヤク、ザ?
少年院を出ている?
「ほ……んとに言ってるの?」
「だいたいそんな感じってとこだな」
「うそだ、」
「まあ、あんな綺麗な見た目してるし、誰だってイメージつかねぇよな」
そう。いつも学校で見る本多くんは、制服を派手に着崩すでもなく、髪を染めるでもなく。
だけど密かに “ 暗黒王子 ” なんて呼ばれているのは、
彼の裏側が垣間見える瞬間が、きっとどこかにあるからなんだと思う。
あたしがさっき目にしたような、ぞくりと寒気を覚えるほどの、普段とは違う一面が……。