梓へ向けて何か言い、嬉しそうにほほ笑む勇。


その様子を見ていると胸がチクリと痛んで、あたしはすぐ雑誌へと視線を落とした。


「あれはないよねぇ」


あたしの気持ちを唯一知っている彩羽がため息交じりにそう言った。


「別に梓が悪いワケじゃないじゃん」


仮に勇が梓を好きになってしまったとしても、それは梓のせいじゃない。


「本当に、そう言い切れる?」


彩羽が意地悪くそう聞いてくるので、あたしは頬を膨らませた。


好きな男子が親友と楽し気に会話をしている所を見て、気にならない女子なんてきっといない。


「あたしはあたしで頑張るからいいの」


あたしはそう言い、雑誌のメーク術伝授のページを開いたのだった。