「……」


何もものを言わない、沙耶。


そんな彼女を助手席に押し込み、俺は運転席に座る。


アクセルを踏めば、発進する車。


「……」


どのくらい、沈黙が流れただろうか。


ふと、沙耶が呟く。


「……あんた、会議は」


疑問符すら、使わない。


「……終わらせてきた。速攻で」


「……そんなんで良いわけ?」


「内容は充実している」


「……そう」


また、沈黙。


思い出すのは、よりによってあの記憶。


(仕方ねぇ……)


せっかく走り出したけど、どうせ停まるなら、家の中の方がいい。


道路で停まるほど、迷惑なことはないからな。


無言で、窓の外を眺め続ける沙耶。


自分の家のことを言うのもなんだが、うちはお金持ちであるがゆえ、金を使うところがないので、庭にえらく金をかけてある。


因みに、色々な施設や団体に多額の寄付をした上での余った金だから、余計に、だ。


金のかけられた庭は、さながら、違う世界のようで、季節季節で違う花を楽しむことができ、今は秋だから、庭に流れる川には散った紅葉が漂っている。


初めて来たときに感激していた沙耶は、今でも庭を気に入っているらしく、時々、なんの意味もなく、こうやって庭を見つめているのだが。