「なんでもないよ」


私の返事に、葛西くんは困ったように笑った。



「あんまり、信用されてないみたいだね俺」


「……」


「そりゃそうか。いきなりキスしてくるようなヤツだもんね?」



今度は自嘲気味に笑う。


どう返せばいいか分からない私は黙って俯いた。



「でもほんとに……瑞季はやめといた方がいいよ。あさひちゃんが傷つく」


「……好きでいるだけでもだめ?」


「え?」

「瑞季くんとどうなりたいとか、思わないから……どうせ嫌われてるし」


「それは……もっとだめ。想ってるだけなんて。……いつまで続くかわからないのに」



突然、語尾が弱くなった。

顔を上げてみたら、心なしか表情が翳っている気がする。



「だってあいつは……」