ケータイ小説 野いちご

【完】こちら王宮学園ロイヤル部




あくまで噂だが、本来なら厳しい入試を受けて入るはずの王宮学園、通称王学。

けれど彼女は、両親のたった一言でここへ転校すると決めた。おそらく両親は相当な権力を持ってる。じゃねえと、ありえない話。



「秘密って、とんでもねえ毒薬だと思わねえ?」



「………」



「人間は隠されたら知りたくなる生き物で。

「秘密」ってたった一言が、たとえハニートラップだったとしても足を入れたくなるんだよ」



甘美な響きを持つくせに、とんでもない毒薬。

一度足を滑らせたら最後、引き返せねえ場合だってあるのに。今のいっちゃんはその不安定なところにいて、たぶんこいつはそれが気が気じゃない。



「本気で引き止めてえなら、今しかねえよ?」



どうせそんなことは微塵も思ってねえんだろうけど。

ふっと自嘲に似た笑みを落としたところでリビングの扉が開いて、何事もなかったかのように莉央から離れた。




「おかえり、遅かったじゃねえの。

もしかしてふたりでイチャイチャしてた〜?」



「ものすごくつまらない冗談ね」



「ふは、言うねえ」



キッチンに足を踏み入れる俺の後ろから、昼飯の話をする王様と姫の声が聞こえて来る。

いまから莉央の朝食つくんのに昼飯って。……ああでも、ものによっては買い出し行かねえと作れねえし。



「今日の昼飯の希望は〜?」



卵液に浸しておいた食パンを、バターをひいたフライパンに乗せて。

焼ける音にかき消されないよう大きめの声で尋ねたら、返ってくるのは夕さんの「和食ー」という返事。ざっくりしすぎだろ。



「姫、和食でなんか希望ある?」




< 63/ 655 >