「つーかさ、お前、バッジって。

まさかと思うけど、本当に入ったのかよ」



「え?あ、うん。そうなの。

明日の朝、珠王先輩が放送で連絡するらしいわよ」



「……軽いな」



「失礼ね。これでも考えたのよ」



何も無鉄砲に入ると決めたわけじゃない。

そうすると決めたきっかけは、みさとがわたしに言ってくれた言葉だけど。自分で自分の可能性を、信じてみたいと思ったから。



「まあ、なんでもいいけど。

……しんどくなったら、ちゃんと頼れよ」



さっきの呆れ声とは打って変わって、優しい声で言う大和。

ありがとうとお礼を言ったら、彼は「ん」と短く返事してくれた。……いつだって、大和はそうだ。




「大和は優しいわよね」



「はあー? なんだよ、急に」



「……ううん。ただ言いたくなっただけ」



言えば彼は、「そ」とそっけなく返してきただけだった。

その後ははかったわけでもないけれどお互いに無言になって、でも、それを気まずいと思ったことはない。



「んじゃあ、俺ここで待ってるから」



「うん、すぐもどってくるわね」



予算を使い間違えているだろう、金の箔押しがされた黒い扉の前。

セキュリティシステムにカードを翳して、中に身を滑り込ませる。大和を待たせているからはやく済ませてしまおうと、自然に早足になった。