「やっべ、すっかり忘れてた! 今日は街に行く日だった!」
 
廊下を滑りながらドレッシングルームへと駆け込み鏡の前に立つ。
 
鏡と睨めっこしながら左右に跳ねている寝癖頭を、クシとドライヤーを使い完璧に整える。

仕上げにワックスで毛先を遊ばせ、鏡に映る自分の姿を見て満足気に頷く。

「よしっ!」
 
今度はドレッシングルームから勢い良く飛び出し再び自室へと向かう。

☆ ☆ ☆

「ふふ……今日も完璧だな」
 
クローゼットの中からお気に入りの一着を取り出し着替えを終えた俺は、目の前にある鏡の前でポーズをとっていた。

「ブラッド! 早くご飯食べちゃってよ!」

「ああ! 分かってる」
 
下の方からミリィの声が聞こえ、俺は開けていたクローゼットを閉める。
 
最後にもう一度、鏡の前で決めポーズを終えた俺はミリィの居る一階へと向かった。

✩ ✩ ✩

「本当に女の子に目がないよね……」
 
朝食を運び終えたミリィの冷たい視線を背後に感じた俺の体に鳥肌が立つ。

こ、この視線はいつもより酷く感じる……。

俺は額に汗を浮かべながら恐る恐る振り返り、彼女の様子を横目で伺いながら言う。

「当たり前だろ! 女の子は俺にとって女神そのものなんだからな」
 
そう……女の子はみんな俺にとって女神――神そのものだ。
 
自分で言うのもあれだが、俺はこう見えてけっこうモテる方だ。

容姿端麗、頭脳明晰、眉目秀麗、質実剛健など、男にとって一番必要な物が俺には全て備わっている。