「違うの……? 答えて」



次の瞬間、再び距離が縮まったかと思うと、髪をするりと持ち上げられた。


そして首筋にゆっくりと手を添えられる。


ビクッと肩が上がった。



「矢代はやめた方がいいよ」


耳元で囁かれる。吐息がかかってぞくぞくする。


近くで熱くて、思考が鈍っていく。



「たとえ、矢代の言う“ あの子 ”があさひちゃんだったとしても……」



ちくり、と痛みが走った。

葛西くんがなにしたのかとか、何を言ってるのか、とか。


なぜか全然、頭が回らなくて。



「俺の方がいいよ。きっと」


ーー泣かなくて済むから。



そっと塞がれた唇。

ふわふわして、まるで夢の中みたいで。

甘く、優しく 傷つけられた。