良ちゃんのお父さんのお葬式が終わった。
「寒っ」
この前、雨に打たれたせいかな。
ここ最近、頭も体もだるい。
制服に着替えようとしたけれど、寒気がひどかったため、再びベッドに寝転がった。
天井がゆっくりと回っているような、止まっているような、そんな感じ。
熱を測ると、38度を超えていた。
お父さんもお母さんも仕事に行ったし、自分で高校に連絡を入れて今日は休むことにした。
ぼんやりとした意識の中、あたしは思い出していた。
雨の中、あたしを突き飛ばしてきた良ちゃんのことを。
彼はお父さんが倒れてから、ずっと他人を寄せ付けない空気をまとっていた。
だから、あたしも本気でぶつからなきゃ本音をさらけ出してくれないと思った。
抱きしめるだけじゃだめだった。
思い切ってキスをした。
そうしたら、逆に強い力で引っ張られて抱きしめられて。
ようやく子どもみたいに泣き出してくれた。
そのまま傘を差さないで、2人で手をつないで家まで帰った。
近すぎる人が亡くなったショックや思いを整理できていないままだった。
きっと良ちゃんもあたしも。
ただ、数年ぶりにつないだその手は、大きくて、力強かった。
簡単にはほどけないよう、きつく繋いでくれた。
あたしの目からも静かに雫がこぼれ続けていた。
雨でバレていないと思っていたのに、家に入る前、良ちゃんは頬に流れたあたしの涙を優しく拭ってくれた。
その時にはもう良ちゃんは泣いていなくて、あたしの頭をぽんぽんと撫でてくれた。
ずっと良ちゃんのことを可愛い年下くんと思っていたけれど、
今は少し、違うような気がする。
大人とこどもの間を行ったり来たり。
そんな良ちゃんが、気になって、ほっとけない。