一瞬 間があいたあと、言葉を続ける。



「お前がいるせいで俺は──」



吐き出されたその言葉は、角を曲がってきた女の子たちの笑い声によってかき消されてしまった。



……今、なんて言ったの？

聞き返そうと背中を追いかけようとした。


だけど、



「あっ、矢代くんだ！」

「今教室帰り？ うちらと一緒に行こ～」



明るい声が私を追いこしていく。

目の前にあったはずの背中がいっきに遠くなった。



再び後ろを振り返った瑞季くんの視界に私は映っていなくて。

私には決して見せてくれない優しい笑顔で女の子たちの声に応じていた。



……舌打ちなんて瑞季くんらしくない。


" お前のせい "


私の、せい……。

私は瑞季くんに、自分が思ってる以上に恨まれてるのかもしれない。



でも、どうして……？


考えても考えてもわからなかった。


瑞季くんの舌打ちが

いつまでも耳の奥に残っていた。